トラウマ治療についてのソマティック(身体的)なアプローチを勉強していくうちに、必ずしもトラウマの対象となる出来事にフォーカスして、曝露療法のようなことを行う必要はないことを知りました。
私自身はトラウマ対象の出来事そのものを想起しながら、眼球運動を行うことでそれがトラウマだと感じなくなる「EMDR」という手法でトラウマ記憶の処理を行って回復した経験を持っていますが、やはり、対象となる出来事を一度は思い出す必要があったため、悪夢やだるさなど、副作用のようなものに苦しんだ記憶があります。
前置きが長くなりましたが、トラウマとは逆の「安心」「安全」「ホッとする」感覚のことを「リソース」といい、これを強化するというアプローチでも、トラウマを克服することができます。
対象となる出来事を一切思い浮かべずにどうやってトラウマを克服するのか?と思われるかもしれませんが、トラウマが川だと仮定して、それを埋め立てることがトラウマ克服だと考えるとわかりやすいかもしれません。
川そのものに、土砂を投げ込んでいく作業がトラウマフォーカス型の治療だとすると、リソース型では、すでにある川の上の中州を探して、その周囲に土砂を足していく方法になります。
結果的にどちらの方法でも、しかるべき量の土砂を投入すればいずれ川は埋め立てられます。しかし、埋め立てていく過程としては、見境なくあちらこちらに投げ込んでいくよりは、すでに足場である中州がしっかりあるほうが、安定した状態で作業が進められるので、事故(副作用)が少ない方法であるといえます。
また、新しいショック(洪水)が訪れた時も、この「中州」がどれだけあるか、どれだけ広くてしっかりしているかで、そのショックがトラウマ化するかどうかが決まってきます。安全基地となる中州が残っていれば、大きな洪水がきても、すぐに埋め立て作業ができるので、氾濫や決壊をせずにすみます。
アメリカの研究結果では、大地震があったとき、同じ被害を受けたにも関わらず、それがPTSDとなったのは、中流以上の白人家庭が圧倒的に多かったそうです。家や財産を拠り所にしていたので、それらを失ったことによる喪失感がトラウマと化してしまったのです。
逆に、大きなトラウマにはならず、すぐに復興作業に入ることができたのは、アメリカ以外の国からやってきた移民たちでした。
彼らは財産を持たない代わりに、助け合って生きる人間関係、コミュニティを形成しており、それは災害に遭おうとも、深まりこそすれ、失われることはなかったからです。
これを読んでいるあなたにとって、頭の中に思い浮かべるだけで、心が緩んでホッとするものがいくつありますか?(健全で中毒性のないものに限ります)
それについて誰かと語り合うと、体温が上がるくらい大好きなもの。
家族や友人の顔、ペット、趣味、風景…
ちなみに私はこれです。(「好きなもの」と書いてある欄の色々)
これを沢山持つことがとても大事です。そしてちょっとやそっとじゃ揺るがないくらい深く愛することも…。
私のヨガのクラスでは、この安心できる!ホッとできる!愛されている!という感覚をより強化して、今あるトラウマを癒やし、新しいショックに耐えられる強くしなやかな心を作る誘導を行っています。
グループ参加されている生徒さんの中にも、終わったあとに必ず中州ができますので、コミュニケーションが苦手な方同士でも、ぽつぽつと心の中の温かい感覚をシェアしながら、ゆるやかに繋がっていく姿が見られます。
ぜひ一度体験いただけると、嬉しく思います。
あなたにお会い出来ることを楽しみにしています。
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